東大目線コラム

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新型コロナウイルスでもリモートワークはなぜ広がらないのか

リモートワークはなぜ広がらないのか

新型コロナウイルスの影響もあって、リモートワーク推奨の流れになっています。
ベンチャー企業などのIT企業は大賛成で、次々に実行する企業が増えています(とはいえ、絶対数は少ない)。
大企業などは案の定、リモートワークは広がらない模様です。

なぜリモートワークは流行らないのでしょうか。一言でいえば、リモートワークは大してメリットがないからです。
政治家、労働者、そして経営者にとってもいいことはありません。
シリコンバレーなどでリモートワークは当たり前というのは思い込みです。

政治家の本音

まず、政治家は明らかにリモートワークの導入の動機はありません。
政治行政とは文書主義と言われますが、実態は記録に残らない話し言葉が重視されます。
電話は盗聴されていて記録されるのは嫌なので、対面で話すことが大切です。
ということで、リモートワークなんて、ありえないのです。
当人たちがリモートワークに関心がないのだから、政府がリモートワークを本気で推奨しようとは思わないでしょう。

労働者の本音

次に、労働者だってリモートワークは嫌でしょう。

日本の労働者は真面目なので、言われた仕事はしっかりこなそうと思います。
とはいえ、家にいたらサボりたくなるし、効率性は落ちます。
職場で仕事するほうが効率的だと感じるので、リモートワークは嫌です。

さらにいえば、日本人は変化が嫌いな人が多いので、新しい試みとしてのリモートワークは面倒でやりたくないのです。

経営者の本音

経営者としても、いつか落ち着くだろうと思ってるコロナウイルスのためだけにリモートワークを進めたいとは思わないでしょう。
リモートワークを導入するには、多少なりともコストがかかります。
せっかくリモートワークを導入したとしても、その頃には沈静化して、無駄遣いというのは避けたいのです。

また、リモートワークを推奨する新興のIT企業たちも、私は感心しません。
シリコンバレーでは、それが当たり前というイメージがあるのか、NewsPicksなどでは称賛の声が上がっています。
社員がコロナウイルスにかかるのを防ぎたい、と。素晴らしいではないですか、と。

ただ、称賛しているのは、好感度を上げたいという承認欲求者たちと、人と接したくないという孤独好きな人*1なのが実態でしょう。

しかし、経営者の思惑は、そうではないでしょう。彼らは口では否定するでしょうが、本音は次のとおりです。

まず、企業イメージをよくして採用活動につなげたいというねらいがあります。簡単にいえば広報活動です。
そして、国内で感染拡大したとき、既存の社員たちからの反発を恐れています。社長の決断が早ければ自分は不安にならなくて済んだと。

さらに中長期的に見たら、家賃を減らしたいということもあります。
リモートワークが普及すれば、社員のために広くて高価なオフィスを借りなくていいのです。
会社経営のうえでコスト削減を考えるとき、家賃は抑制したいのは当然です。
お金のない中小企業は特にそうで、東京都心は家賃が高騰していて、ベンチャー企業も渋谷から恵比寿・五反田などへ移動していましたが、物理的にも限界。
だから、リモートワークで自宅で働いてもらえれば、家賃が浮いて、コスト削減というわけです。

そして、リモートワークの流れはシリコンバレーの流れと逆行しているのは、すでにメディアで報道されているとおりです。
競合他社に社員を奪われたくないなどエンゲージメントを深めたいし、セキュリティを考えたらリモートワークはデメリットが多いのです。

したがって、リモートワークと相性がいいのはアウトソーシングできるような単純作業くらいでしょう。
インド人はアメリカ企業のアウトソーシングの受け皿で、まさにリモートワークですよね。
アメリカより人件費はもちろん、土地も安く、リモートワークはやらなきゃ損というわけです。

経済活動を止めるなという欺瞞

ということで、リモートワークはなぜ広がらないのかというと、進めたいと思う人が少ないからです。

新型コロナウイルスは見えない驚異なので、東日本大震災のときと違って日本人の危機感がまだほとんどないというのは、昨日述べたとおりです。
宝くじを買う人が「自分だけは当たる」と思い込むと同様に、「自分だけはコロナにかからない。かかってもなんとかなるさ」と思い込んでいる人が実に多いのです。

あと、リモートワーク推奨派・反対派ともに一部の人が発言しているのが、経済活動を止めてはいけないということです。
致死率2%なんて大したことがないから経済を止めるな。
日本経済全体のために働こうと言っているのです。

これは、おかしな話です。

例えば、工場は一度生産活動をストップしたら効率が悪くなるから止めるなというのです。
しかし、日本は世界有数の休日・祝日数を誇っています。
お盆だって、年末年始だって、工場はストップさせているではないですか。

別に今のタイミングで工場をストップさせても大した問題ではないのです。
そこまで経済活動を重視されたいなら、お盆休みを今のタイミングで取ればいいだけです。

致死率は2%しかないから大した問題ではないという嘘

少し脱線しますが、致死率が2%しかないから大した問題ではないという意見を平気で言う人がいます。
数学的に考えたら、大したことはない。多少の犠牲はやむを得ない。何事もゼロリスクはないのだから、大したことはないというわけです。

しかし、原発事故で多少の犠牲はやむを得ないというのと同じではないでしょうか。
戦争で国民の多少の犠牲はやむを得ないというのと同じではないでしょうか。

武漢の致死率は4%です。持病がある人の致死率は10%だといいます。
このまま日本の対策が無防備でありつづけるなら、武漢の致死率を超える可能性があります。
日本人は、自分たちよりリテラシーが低い(と信じている)中国に比べたら、医療機関が充実しているから中国ほどに感染は広がらないと信じています。
しかし、「3時間並ぶのに3分診察」が得意な日本の医療機関のどこが信用できるんでしょうか?

つまり、人の命を軽視した意見です。
別に学者ならさもありなんという感じで、頭でっかちなのです。
しかし、政治家や官僚も大したことがないと考えているきらいを感じます。

やはり原発事故の反省をしていないのです。
反省があれば*2、日本の人口の2%にあたる福島県民に大きな犠牲を出してしまったので犠牲が出るような緊急事態に徹底的に備えればならないと思うはず*3

確かに、結果として犠牲者が出るのは諦めざるを得ないのでしょうが、対策の実行者はゼロを目指さないといけないのです。
原発でいえば、確率論的に起こりづらいから大丈夫だと思っていたことが油断でした。確率論的に大丈夫なのではなくて、確率論的に大丈夫そうだけど、万が一が起こってしまったときのことを考えて徹底的にリスクを0に近づけるべきでした。
戦争でいえば、外交努力によって戦争勃発を防ぐのが国家のセオリーです。しかし、太平洋戦争で外交努力は軽視されて、犠牲者が出たとしても道義的に戦うことが選択され、世界中でひどい数の犠牲者が出ました。

世界一の感染列島「日本」が誕生へ

日本政府は犠牲者を出さないことに露骨に関心はないようです。

したがって、武漢の致死率を超えることはありえます。
武漢の人口は東京と同じくらいですが、日本は武漢の10倍の人口があります。感染者・死者数ともに、日本は10倍のポテンシャルがあります。
それに、日本は致死率が高い高齢者も多く、死者数が高く出る可能性があり、そうすると致死率も高まるでしょう。

一方で、中国は街を封鎖しています。香港も封鎖しました。
目先のことだけを考えずに、長期的な繁栄を考えたら、短期的な損失は覚悟のうえで、合理的に判断するのです。

日本は長期的な思考が苦手です。
本当のエリートも見当たらず、思考停止に陥っています。
日本が世界一の感染列島になる日が来ても不思議ではありません。

パニックを煽るなという言論統制

最後に言いたいのは、変にパニックを煽るのはけしからんという風潮ですが、言論統制の一種だと思います。
ブログ記事に「新型コロナウイルスに関する記事です。注意しましょう。正しいのは政府の情報です」というのは親切にように見えて、危険です。

政府に情報が握られたら最後、国民はその犠牲になるのです。
太平洋戦争では、正しい情報は国民に入ってこずに「連戦連勝」という嘘が報じられていました。
東京大空襲沖縄戦、原爆投下などの目に見える悲劇が起こるまで日本人は踊らされるのです。

武漢よりひどい状況になったら嫌でもパニックは起きます。パニックを起こすなといってもパニックは起きます。しかし、起こってからでは遅いのです。
そもそも、現時点でマスクの買い占めが起こっている時点でパニックは始まっています。
ほとんど対策せずに「パニックせずに、正しく怖がる」というスローガンでは、いつか来た道と同じなのです。

政府や権力者が反省しないのなら、一人ひとりが反省するしかないのです。

*1:ちなみに、私も一人で仕事するのが好き派なので、リモートワークをしてくれるのは労働者の立場としてなら、ありがたいと思います。

*2:反省がなくても当然だと思うのですが

*3:たまたま2%は同じですが、致死率は感染者数に対する致死率であって人口に対する致死率ではないので、あしからず。ただし、多少の犠牲はやむを得ないという権力者たちの本音はにじむ