札幌マラソン大反対!
東京オリンピックのマラソン・競歩が「アスリート・ファースト」のために東京ではなく札幌で開催されるという話になっています。
今回ばかりは、IOC(国際オリンピック委員会)のやり方が相当強引です。「アスリート・ファースト」は嘘であり、「都民の税金で札幌開催」というのは筋が通っていませんし、「札幌オリンピック招致」をめぐる恫喝でもあるでしょう。
どうも日本人は「事なかれ主義」で、外国人に何か言われたら素直に従う癖があるせいか、小池都知事が嫌いな人の声が大きいせいか、東京都民と北海道民以外という大半の日本人には関係がないせいか、札幌開催やむなしという風潮が強いです。
しかし、小池都知事への賛否は脇においておいて、今回はIOCに日本がなめられていることを説明しましょう。
アスリート・ファーストの嘘
まず、おかしいのはIOCが主張する「アスリート・ファースト」です。
ドーハで行われたマラソンで棄権する選手が多く出たことから、急遽東京オリンピックでも選手のために改善を講じる必要が出てきたとIOCは言います。
しかし、「アスリート・ファースト」を主張した場合、ベストの解決策は1964年と同じように「10月開催」です。しかし、これは各社報道のとおり、欧米の野球、アメフト、サッカーの重要なシーズンとかぶるため、アウトです。
つまり、「アスリート・ファースト」は嘘で、「欧米テレビ・ファースト」なのです。
ドーハと東京を比較するのはおかしい
次のおかしさは、ドーハと東京を比較する点です。
ドーハはカタールの首都で、赤道との距離でいえば北緯25度、社会の授業で習うケッペン気候区分でいえば、「砂漠気候」です。
一方で東京は、北緯35度、気候区分は「温暖湿潤気候」です。
ドーハは7〜8月開催ではないにせよ、気候の環境がそもそも地球規模で違うドーハと東京を比較するのはおかしいでしょう。
さらに、今回棄権者が大量に出たドーハ大会は気温が32度だったそうです。
そして現時点での東京オリンピックの予定でいえば、東京の朝6時スタートなら、32度はおろか30度を超えることはまず考えづらいです。スタート時点で26度くらい、ゴールする頃の気温でも28度くらいです。
それでも選手等への影響を考える(IOCとしてアスリート優先をアピールする)なら、スタート時間を30分早めて5時半スタート、あるいは(日の出前だけど)5時スタートくらいの微修正でよかったわけです。
それなのになぜ突飛な札幌案を出したのか疑問が残ります。
外国人「札幌は東京の一部」!?
日本人は生真面目なので、「東京オリンピック」という名前の大会なのだから、花形種目のマラソンが「札幌」で開催されると「おかしい」と思う人も多いでしょう。
でも、外国人(IOC)からしたら、日本の都市で知っている街はせいぜいTOKYOとKYOTOくらいでしょう。だから、SAPPOROもTOKYOも変わらないのです。
これは例えば、仮にロンドンオリンピックがあったとして「マラソンはロンドンやめてリバプールにしよう!」という話になっても、日本人からしたら「どっちでもいいや」くらいな感覚になるでしょう。そういう感覚なのです。
つまり、外国人(IOC)からしたら、「札幌も東京も変わらないのに、なぜ日本人は揉めているんだ?」という感覚なのかもしれません。
「東京都の暑さ対策が信頼できない」はナンセンス
国内では、東京都の暑さ対策の取り組みがふざけているからIOCから信頼を失って事前に話もなく札幌に変更されたのだ、という声も聞きます。
しかし、これはナンセンスです。
今回はドーハ大会の影響で突然に暑さ対策の重要性が増加したわけで、(バイアス抜きに本当に暑さ対策が重要であるならば)それを受けての対策案を東京都に出させて東京都が本気なのか判断すればよかったのです。
状況が変わったから対策が必要という段階で、開催都市の東京都に再提案もさせないというのはアンフェアで、東京都への嫌がらせとしか思えません。
そもそも仮にIOCが暑さ対策に不満を持っていたとしたら、その段階で都度改善を促さなければいけないべきで、今回ドーハ問題があったからといってすぐに東京を切り捨てるのは強引で筋が通っていないでしょう。
暑さ対策が不十分ということを強調するのであれば、これまでそれを放置してきたIOCにもその責任があるはずです。
札幌開催で得する北海道、損する東京都民
今回の問題で「東京、札幌どっちでもいい」という声も聞きます。
まあ、東京都民や北海道民でなければ当然の意見です。
しかし、東京都のお金で札幌開催を進めて得するのは誰か、損するのは誰かを考えたほうがいいでしょう。
まず、移転にいくらかかるのか。
北海道知事は会場整備に数十億円が必要だと会見で説明しています。
国家予算ならまだしも、またいくら稼いでいる東京都といえど、この金額負担は小さくありません。
また、どうせ整備費用は積み上げられるだろうし、警備費用含めて関連経費が積み上がるのは間違いありません。
他人の財布なのでお金はどんどん使われていくでしょう。
そして、お金が落ちる先が東京都民の税金なのに北海道に落ちるわけです。
地方創生を進めたい国からしたら「まあいいか」となるでしょうが、東京都からしたら、ふるさと納税でただでさえ税収が落ちているのに、さらに支出が増えるのかということになります。
東京都職員は準備作業をボイコットしよう
最後に、法的には東京都が札幌開催の負担を負うことになっているという意見が出ていることもナンセンスです。
法律関係を結ぶためには、そもそも信頼関係が必要です。
しかし、今回のIOCの一方的な判断はその信頼関係を壊すものです。個々の条約の話ではなくて、法律関係そのものの問題になるわけです。
したがって、橋下徹さんも述べているように、本気でIOCと闘うなら、大きなくくりでもって「東京開催を中止する」と恫喝したほうがいいです。
さらに、東京都の職員が準備作業をボイコットをすればいいのです。大会の開催が遅れて9〜10月にずれ込めば、涼しい中でマラソンはできるでしょうし、IOCは泣きを見ることでしょう。
そうなればIOCも何らかの妥協策を示さざるを得なくなると思われます。
法律問題にすればIOCのオリンピックは終わる
今回のIOCの決定は公的機関としての意思決定プロセスを明らかに逸脱しているわけで、東京都以外のオリンピック開催国もIOCへの印象が悪くなっていると思われます。
そして今回の問題が大きくなれば、今後のオリンピック開催も危ぶまれます。
というのも、オリンピックは儲からないことがすでにわかっているので、オリンピックを開催したい国が減っている状況。
その中で、開催が決まってからも、IOCのせいで負担が増える可能性があるなら、そのリスクを嫌って、オリンピックを開催したいという国は一層減ることでしょう。
開催する国がなくなってしまったら、オリンピックはおしまいです。
現実的には伝統あるオリンピック自体がなくなることは考えづらいですが、IOC解体論は間違いなく出てくるわけで、IOCのメンバーは戦犯になること間違いなしでしょう。
2030年札幌オリンピック招致をめぐる恫喝
最後に、IOCはそもそも賄賂漬けにされていて、汚い組織というのもわかっていますね。
したがって、IOCは今回も「俺たちは札幌に移転しても金は負担しない。東京都民でも日本国民でもどっちでもいいから、とにかく日本がオリンピックのためにお金を出せ。札幌で2030年にオリンピックを開催したいんだろう。払わなかったら札幌は無しだ」という感覚なのでしょう。
小池都知事以外にむしろ適任者がいない日本
そうすると、そういう国際機関にNOといえる日本人が必要です。
しかし、日本政府やJOCは札幌開催に乗り気のご様子。
政府は「地方創生」にもなるし国税を支払いたくないうえに菅官房長官は小池都知事の嫌がらせをしたい。JOCも負担はしたくないし、当然に東京都より政府寄り。
したがって、残されるのは東京都のみ。
来年の夏に選挙が迫る小池都知事は再戦されるか微妙なところ。
都知事の世間的なイメージは以前より損なわれていますが、今回の問題は冷静に考えれば東京都は被害者なので同情も集めやすい。
ピンチはチャンス。
どういう手を打てるか、国際問題だけにうまく対処できれば、小池都知事は総理の道に復活できるかもしれませんよ。
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