奨学金延滞増なら"お荷物大学"は負担増に
日経新聞などによれば、2020年春から大学生らが利用する日本学生支援機構の奨学金で、連帯保証人を設定しなくても借りられる機関保証を全員に義務付ける方向とのことです。
その原因は、奨学金の延滞者の増加です。
利用者から見ると、機関保証をする場合は奨学金の振込金額から、一定額が引かれます。
借入金額にもよりますが、現在は毎月の振込額の3.7%〜5.4%が抜かれてバカになりません。
これは奨学金を返還できない人の分を肩代わりしているということです。
よく日本学生支援機構の奨学金は低金利だから借りたほうが得とも言われることがありますが、今回の保証額強制徴収化により、負担が少ないとは言えない状況になりそうです。
奨学金の保証料は不公平だ
以下、世帯年収が低い方向けで年収基準が厳格な第1種ではなく、標準的な世帯でも利用することが少なくない第2種についての議論で進めます。
今回義務化されそうな奨学金の期間保証料には2つの不公平があると思います。
1つは、言うまでもなく、将来への投資という教育分野において、金融資産を多くもつ高齢者ではなくて若者に負担を押し付けているという、資産格差/世代間の不公平さ。
2つめは、延滞率が比較的低い東大に行っていようが、入学申込みをすれば実質無試験で合格できる延滞率の高いFラン大学に通っていようが、同じ保証料を支払うという不公平です。
延滞者を出すお荷物大学はどこ?
実は大学別の延滞発生率ランキングが作成されています。
延滞発生率は1位の至誠館大学が9.93%から0%までと大学によって差が比較的大きく生じています。
大学によってこんなに延滞率が違うのに、機関保証料を一律要求するのはいかがなものでしょうか。
これは不公平ではないでしょうか。
延滞ランキング上位を見てみれば、初めて名前を聞くような大学ばかりです。
はっきり言って、世間体で大学に行くだけでモラトリアムを過ごすだけの学校ではないでしょうか。
どうせ大学でほとんど何も勉強しない人の機関保証料まで、真面目に高度なことを学ぶトップクラスの学生まで負担することは、合理的とは言い難いです。
大学別の保証料を
私がよいと思うのは、大学別の保証料を設定することです。
過去何年かの実績ベースで毎年更新します。
そうは言っても、月額で書籍1冊買えるかどうかくらいの差を目安にします。
トップ大学の学生は本を読みますから、その書籍1冊分といえば理解は得られやすいのではないでしょうか。
反論として、教育機会は平等に与えられるべきだという人がいるかもしれません。
ですが、月額で数千円レベルの差が開くくらいで、これによって教育機会が失われるというのも説得力はありません。
また、大学別に算定するのはコストがかかるから反対と言われそうですが、わかりやすく言うとExcelのイメージを思い浮かべれば、データベースで簡単にはじき出せるし、アルゴリズム(計算式)を一度組み込めば、コストはほとんどないはずです。
むしろ、自分の所属するOB・OGが滞納して保証料が高くなったと感じた場合、将来自分はそうしないようにしなければいけないという思いが強くなって、延滞率が低下する効果が得られるような気さえします。
(補論)給付型奨学金は学部生には難しい
おまけです。
奨学金の議論でよく目にするのは、実質学生ローンの貸与型ではなくて、給付型にせよという意見があります。なぜならば海外ではそれが一般的だからといいます。
海外でやってるから日本でもというのは乱暴ですし、資金の拠出元の議論がありませんし、授業料の国際比較の話もあまりされません。
確かに、極端な話ですが、授業料を米国並に高くして、その分を給付型奨学金を充実させて、毎年成績により奨学金を更新するか判断する制度にして、大学生を授業に専念させる仕組みなら一見良さそうな感じがします。
ただ、日本の大学教授が必ずしも全員が全員良い教育をしているとは到底思いませんし、必修科目の座学なんて聴けたものではないので、そういう授業に学生を縛り付けることが良いことか疑問です。
そして何より、大学1〜2年生で専門課程の前にある教養課程があって、キャリアの見通しさえわからない学部生に、給付対象の判断基準を設定するのは難しいでしょう。
優秀な学生には給付金を、という考えは当然だと思いますが、優秀な学生とはなにかというのは判断が難しいということです。
そのため給付型奨学金は、学部生を対象にしたポテンシャル判断ではなくて、大学院生を対象にした専門的な分野に関する知見や経験に基づいて判断したほうが、アカデミック界に貢献できる人材を育てることができるでしょう。
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